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巻頭特集 -旬の話題をお届け-

2011.12.01 [第30号]

オープンな世界に対抗したクローズドな世界...スティーブ・ジョブズの遺したもの。


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希代のイノベーター

2011年10月5日、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏が亡くなりました。
ガレージからアップルを興し、Macintoshなどのパーソナルコンピュータの発売、
晩年にはiPod、iPhone、iPadなど革新的で美しい製品を次々と発売し、市場を席巻したことから、
希代のイノベーター、カリスマとして最大級の賛辞を贈られています。
ジョブズ氏は天才として賛美される一方、先日発売された自伝「スティーブ・ジョブズ I・II」などでも
明らかにされている通り、天才的かつ一切の妥協を許さない完璧主義者であるがゆえ、
人格面では決して付き合いやすい人物ではなかったようです。



オープンな世界、クローズドな世界

そんなジョブズ氏と、その象徴ともいえるアップルですが、
ほかのコンピュータ企業やプラットフォーム、製品とはどこがちがうのでしょうか。
それはおそらく「ハードウェアとソフトウェア、プロモーションから流通販売に至るまでの
すべてを統合し、ユーザー体験を完璧にコントロールしようとしていること」ではないかと思います。
つまり、クローズドな世界を創り上げようとしたということです。

逆に...世界標準のOSであるマイクロソフトのWindowsの場合、同じく世界標準のPC/AT互換機で
動作するため、世界中のたくさんのメーカーがWindows搭載PCを発売しています。
ユーザーはWindowsPCを買おうと思ったら、あらゆるメーカーや機種から選ぶことができますし、
自作することだってできます。それはマイクロソフトがWindowsのライセンスを
各メーカーやユーザー向けにオープンにして販売しているからこそ出来ることです。
また、モバイル端末の世界では、グーグルのAndroidはオープンプラットフォームであり、
様々なメーカーからAndroidを搭載するスマートフォンやタブレットが発売されています。
その性能、使い勝手やデザインは製品によってまるで異なります。

それに対してアップルの場合、MacOSを搭載するのはMacだけであり、iOSを搭載するのは
iPhoneやiPadといった自社製品に限られています。
(過去にはMacintosh互換機が発売されたこともありましたが)
また、iOSで利用できるアプリケーションはアップルの厳正な審査を通過したものに限られ、
流通や販売経路に関しても徹底的に管理されています。



全てのユーザー体験に責任を持つという思想

ジョブズ氏には「全てのユーザー体験に責任を持ちたい」という思想があり、
製品に関わるすべてを自分達でコントロールすることでそれが実現できると考えていたようです。
ハードとソフトを別個のものとせず、統合した形で開発することで、iPhoneなどでは
ユーザーインターフェースを直感的かつシンプルなものにし、ストレスのない未来的な操作感を実現しました。
また、デザインへのこだわりも凄まじく、技術的な問題でデザインを犠牲にすることを
とことん嫌悪しました。梱包箱のデザインにもこだわりが徹底されており、製品を受け取った時や
開梱したときには他メーカーの製品にはない感動を味わえます。
また、販売店を制限することで、ユーザーがより優れた環境・スタッフのもとで製品を購入できるように
しようともしました。

普通のメーカーならやらないような細部まで見過ごさず、全てをコントロールすることで、
製品にかかわる全局面においてレベルの高い感動的な体験を提供しようとしています。
これは「ディズニーランド」の思想にも通じるところがあるのではないかと思います。



コントロールされた「魔法の王国」

つまり、アップル製品というのは全てがアップルによりコントロールされた「魔法の王国」なのです。
ただし、そのクローズドな魔法の王国の中では自由が制限されています。
iOSをアップル以外のモバイル端末で利用したり、自分で作ったアプリを自由にインストールしたり、
iPhoneのバッテリーを自分で交換したり...という事は原則としてできません。
アップル製品が買えるお店も限られています。

その反面、WindowsやAndroidのオープンな世界には自由があります。
(といってもWindowsとAndroidではだいぶ性格が違いますが)
いろいろなメーカーの製品を選ぶことができ、OSのカスタマイズを細かく行うことができ、
好きなアプリを開発したりインストールしたりすることができます。
また、OSが動作するハードウェアを自分で製作したり開発することが出来ます。
製品を買えるお店もアップルより圧倒的に多いです。ただ、自由度が高いがゆえ、
製品によって性能や使い勝手、デザインの差が激しかったり、OSの安定性に問題があったり、
プラットフォームの開発者側ですべてをコントロールすることはできません。

WindowsとMacの争いでWindowsが圧倒的な勝利を収めたことや、iPhone対Androidの争いで
後発のAndroidがシェアで逆転しつつあるように、世界におけるシェアという点ではオープンな
プラットフォームが優位に立ってきています。それはこれからも変わらないのではないでしょうか。
ただ、アップルはほかのメーカーに比べて圧倒的なブランド力と利益率を誇り、
2011年8月には時価総額でエクソンモービルを抜いて世界一になりました。

ジョブズ氏は「一切妥協せず全てをコントロールすることで、
オープンなプラットフォームとは趣が異なる素晴らしい製品・体験を提供することができる」ことを
世に示してくれたのではないでしょうか。どちらが良い悪いではなく、オープンな世界と、
クローズドな魔法の王国...どちらを選ぶかはユーザーの自由です。
できれば、いつまでも選択の自由が持てるよう、
アップルには今後も素晴らしい魔法の王国を創ってくれることを期待したいです。





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