その他

2011.03.01 [第21号]

第9回 - サービスの「発明」その2

Amazon.com は、いわゆる「ワンクリック特許」(米国特許5960411)に関し、ライバルである Barnes and Noble(バーンズアンドノーブル)を特許侵害事件として1999年10月に提訴しました。


Barnes and Noble は、1965年、ニューヨーク大学の学生で、大学内の生協でアルバイトをしていたレオナルド・リッジオが、「本を売るなら自分でやったほうがうまくゆく」とグリニッジ・ヴィレッジに小さな学生向け書店をオープンしたのが創業のきっかけとなっています。その後、優れたサービスと知識豊かなスタッフのおかげで評判になり、1970年代には6店舗を展開するまでに拡大、さらに、全米に積極的に進出し、アメリカ最大の書店チェーンにまで成長してきました(2009年10月現在、同社は計777の店舗を運営しているとのことです)。


このような会社の歴史から、Barnes and Noble も Amazon.com 同様に、一種のベンチャー企業としてスタートアップしたことがわかります。Amazon.com は、1995年7月にインターネット上で業務を開始。いまや21世紀初頭における世界で最も認知度の高いオンライン・ブランドにまで急成長しているのはご存知のとおりです。


さて、このようなライバルの両者が、「ワンクリック」の発明に関して、火花を散らすことになりました。


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事件の概要

【1997年】
Amazon.com は、ワンクリック方式のウェブサイトにより、
売り上げを伸ばしていた。
Barnes and Noble も、BarnesandNoble.comというウェブサイトで
書籍やCDなどを販売していた。


【1998年5月】
Barnes and Noble は、同社ウェブサイトに
「エクスプレスレーン」というという名前のワンクリック注文方法を採用。


【1999年10月】
Amazon.com は、Barnes and Noble が '411特許を侵害しているとして、
シアトル西部連邦地方裁判所に提訴。



裁判では、Amazon.com の出願が、本来特許になるべき発明であるのかどうかが争点となりました。Barnes and Noble は、「ワンクリック注文方式は誰もが思いつく当たり前の方式であり、進歩性や新規性がないため、無効な特許である」と主張。これに対し、Amazon.com は「一見、当たり前のようだが、顧客に注文の確認を行わずして、ワンクリックのみで注文を成立させる方法は、この発明以前には存在しなかった。特許庁の審査過程における調査でも明らかなように、このような方法は、過去には無かったものである」と主張しました。


裁判ではこの Amazon.com の主張を裏づけるように、IT分野の専門家が「顧客の確認を行ってから注文を成立させるのがその当時の常識であった」と証言したり、Barnes and Noble 側が立てた証人(技術専門家)も、「私は、ワンクリック注文方式を簡単には思いつけない」と証言しています。Amazon.com は、このワンクリック方式が広くユーザーに受け入れられ、商業的にも成功しているとも主張。これは、米国特許法では、特許性判断の際に、商業的な成功度合いも考慮されるからです。


なお、日本でもワンクリック特許は出願されましたが、ソニーが1995年に類似のシステムをすでに出願していたため、新規性がないとして、拒絶されています。ちなみに、ソニーはこの出願に対して審査請求をしなかったため、特許として成立してはいません(価値や有用性がわからなかったのだとすれば、惜しかったですね・・・)。




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